◆総合原価計算の意義
総合原価計算は、単一又は同種類の製品を、連続して反復生産する業種に適用されます。
総合原価計算における製品の製造原価の計算は、1原価計算期間の原価要素の消費高を総合的に集計し、月末に完成品原価と月末仕掛品とに配分します。
形式的には、月末仕掛品を評価計算し、総製造費用(月初仕掛品+当月製造費用)から月末仕掛品を差し引いて完成品製造原価を計算します。
◆総合原価計算の種類
総合原価計算には、製品の種類と製造形態の違いによって次の4種類あります。
①単純総合原価計算
②等級別総合原価計算
③組別総合原価計算
④工程別総合原価計算
◆期末仕掛品の評価計算
●総合原価計算の特徴は、期末仕掛品の金額を計算して、これを総製造費用から差し引いて完成品原価を計算するところにあります。従いまして、期末仕掛品の評価計算が最も重要な内容となります。
●期末仕掛品の評価計算方法は、いくつかありますが、ここでは、平均法と先入先出法についてご説明いたします。
●まずですが、直接材料が製造着手のときに全て投入する場合には、直接材料費と加工費とに分けて期末仕掛品を評価計算します。
直接材料費は、製品の主要構成部分となる材料費です。
加工費は、直接材料費以外の製造費用で、間接材料費、労務費、経費をいいます。
(1)平均法による期末仕掛品の評価計算
①期末仕掛品直接材料費=(期首仕掛品直接材料費+当期直接材料費)×期末仕掛品数量/(完成品数量+期末仕掛品数量)
②期末仕掛品加工費=(期首仕掛品加工費+当期加工費)×期末仕掛品完成品換算数量/(完成品数量+期末仕掛品完成品換算数量)
※期末仕掛品完成品換算数量=期末仕掛品数量×進捗度
(2)先入先出法による期末仕掛品の評価計算
①期末仕掛品直接材料費=当期直接材料費×期末仕掛品数量/(完成品数量−期首仕掛品数量+期末仕掛品数量)
②期末仕掛品加工費=当期加工費×期末仕掛品完成品換算数量/(完成品数量−期首仕掛品完成品換算数量+期末仕掛品完成品換算数量)
※期首仕掛品完成品換算数量=期首仕掛品数量×進捗度
※期末仕掛品完成品換算数量=期末仕掛品数量×進捗度
●直接材料が作業の進行に応じて投入される場合には、上記、直接材料費の算式中の仕掛品数量を完成品換算数量で計算します。すなわち、直接材料費も加工費と同様に計算することになります。
◆仕損・減損の処理
製造過程で、材料の不良や機械の故障などで不完全品が発生した場合を仕損といいます。また、製造過程で原材料が蒸発・ガス化・煙化などにより製品化しない場合の原材料の減少を減損といいます。
仕損・減損は、その発生が避けられないと認められる正常なものと、特別な理由による異常なものに分けられます。ここでは、正常なものについて、ご説明いたします。
正常な仕損・減損は、良品が負担しますが、その負担のさせ方は仕損・減損が製造工程のどの時点で発生したかによって異なってきます。具体的には、期末仕掛品の評価計算に影響してきます。
●仕損・減損が、期末仕掛品の進捗度よりも以前に発生した場合
期末仕掛品と完成品の両者が負担します。この場合には、期末仕掛品の計算は、仕損・減損の数量は無視して、上記の算式のままで計算することになります。
●仕損・減損が、期末仕掛品の進捗度よりも後に発生した場合
完成品のみが負担します。この場合には、期末仕掛品の計算は、次の算式で計算することになります。
(1)平均法による期末仕掛品の評価計算
①期末仕掛品直接材料費=(期首仕掛品直接材料費+当期直接材料費)×期末仕掛品数量/(完成品数量+仕損・減損数量+期末仕掛品数量)
②期末仕掛品加工費=(期首仕掛品加工費+当期加工費)×期末仕掛品完成品換算数量/(完成品数量+仕損・減損換算数量+期末仕掛品完成品換算数量)
(2)先入先出法による期末仕掛品の評価計算
①期末仕掛品直接材料費=当期直接材料費×期末仕掛品数量/(完成品数量+仕損・減損数量−期首仕掛品数量+期末仕掛品数量)
②期末仕掛品加工費=当期加工費×期末仕掛品完成品換算数量/(完成品数量+仕損・減損換算数量−期首仕掛品完成品換算数量+期末仕掛品完成品換算数量)
※数量の分母に、+仕損・減損(換算)数量が加わることになります。
◆単純総合原価計算
●単純総合原価計算は、同一種類の製品を連続して大量に生産する業種で採用される原価計算である。
●単純総合原価計算は、次のように完成品原価を求めます。
①当期製造費用の計算
当期製造費用=当期材料費+当期労務費+当期経費
②総製造費用の計算
総製造費用=当期製造費用+期首仕掛品原価
③期末仕掛品の計算
昨日に、ご説明しました方法によって、期末仕掛品原価を計算する。
④完成品原価
完成品原価=総製造費用−期末仕掛品原価
⑤完成品単価
完成品単価=完成品原価÷完成品数量
◆等級別総合原価計算
●等級別総合原価計算は、同一の製造工程から、種類は同じであるが、その形状・大きさ・重量などが異なる製品(等級製品)を連続して生産する業種で採用される原価計算である。
●等級別総合原価計算は、単純総合原価計算と同様に計算された完成品原価を、次のように各等級にあん分して、各等級製品の完成品原価を計算します。
①等価係数の決定
等級の異なる製品を等級として換算するための一定の基準のことを等価係数といい、大きさ・重さ・品質などに基づいて決めます。
②積数の計算
等価係数に、各等級製品の完成品数量を掛けて積数を求めます。
③あん分原価の計算
完成品原価を積数の比で配分して、各等級製品の製造原価を計算します。
各等級製品の製造原価=完成品総合原価×各等級製品の積数/積数の合計
●等級別総合原価計算では、各等級ごとに製品勘定が設けられ、完成品原価について次のように仕訳を行います。
1級製品 ×× 製造 ××
2級製品 ××
3級製品 ××
◆組別総合原価計算
●組別総合原価計算は、異種の製品を組別に連続して生産する業種で採用される原価計算である。
●組別総合原価計算では、製品の規格・品質が異なるごとに組を分け、次のように組単位の完成品原価を計算する。
①当期の製造費用を各組に直接集計した組直接費と、共通に発生した組間接費とに分ける。
②組直接費は各組の製品に賦課し、組間接費は一定の配賦基準によって各組に配賦を行う。
③各組の当期製造費用に期首仕掛品原価を加算し、その合計から期末仕掛品原価を差し引いて組み別の完成品原価を計算する。
④各組の完成品原価を完成品数量で割って、完成品単価を計算する。
●組別総合原価計算では、組ごとに製造勘定と製品勘定が設けられます。
①組間接費の配賦仕訳
A組製造 ×× 組間接費 ××
B組製造 ××
②完成品の振り替え
A組製品 ×× A組製造 ××
B組製品 ×× B組製造 ××
◆工程別総合原価計算
●工程別総合原価計算は、製造工程が2つ以上の連続する工程に分かれ、各工程を通過して製品を完成させる業種で採用される原価計算である。
●工程別総合原価計算では、各工程が独立した製造部門として扱われて、次のように原価計算が行われます。
①当期製造費用を工程個別費・補助部門個別費・部門共通費に分ける。
②工程個別費は各工程に、補助部門個別費は各補助部門に賦課する。部門共通費は適切な配賦基準によって、各工程と各補助部門に配賦する。
③補助部門費を各製造工程に配賦する。
④各工程に集計された製造費用に期首仕掛品を加算し、期末仕掛品を差し引いて各工程の完成品原価を計算する。
なお、第1工程の完成品原価は第2工程へ前工程費として振り替えられる。この第2工程以降における前工程費は、前の工程の完成品をもとに製造するという点から、製造着手のときに全て投入された直接材料と同様に、期末仕掛品の計算を行います。
⑤各工程及び最終工程の完成品原価を完成品数量で割って、完成品単価を計算する。
●工程別総合原価計算では、工程ごとに製造勘定が設けられます。
①第1工程完成品原価の第2工程への振り替え
第2工程製造 ×× 第1工程製造 ××
②完成品原価の振り替え
製品 ×× 第2工程製造 ××
◆副産物
生産物の製造工程から必然的に発生する副次的な物品を副産物という。その処理仕訳は次のようになります。
①副産物の発生・評価した場合
副産物 ×× 製造 ××
②上記①を売却した場合
現金 ×× 副産物売上 ××
売上原価 ×× 副産物 ××
③その発生が軽微なため無評価のまま売却した場合
現金 ×× 雑益 ××
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