決算

工業簿記の決算は、商業簿記と同様に行われます。

商業簿記と比較して、特徴のある点として、原価計算勘定の整理と製造原価報告書を作成する点にあります。

工業簿記で作成される財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書があります。

◆貸借対照表

貸借対照表について、商業簿記と比較して異なる点は、「商品」ではなくて、「原材料」「仕掛品」 「製品」となります。

なお、貸借対照表の出題は、全くありません。

◆損益計算書

損益計算書について、商業簿記と比較して異なる点は、次の通りです。

①売上原価

●商業簿記

売上原価
　期首商品棚卸高　××
　当期商品仕入高　××
　　　　計　　         ××
　期末商品棚卸高　××

●工業簿記

売上原価
　期首製品棚卸高　　 ××
　当期製品製造原価　××
　　　　計　　　　　      ××
　期末製品棚卸高　　 ××

商品が製品となり、当期商品仕入高が当期製品製造原価となります。

②原価差異の表示

予定価格による原価差異は、決算で売上原価勘定に振り替えられます。それを、損益計算書では、次のように表示します。

売上原価
　期首製品棚卸高　　 ××
　当期製品製造原価　××
　　　　計　　　　　      ××
　期末製品棚卸高　　 ××
　　　差　引　　　　     ××
　原価差異　　　　　   ××

なお、原価差異が借方差異であれば加算され、貸方差異であれば減算されます。

損益計算書は、時々出題されています。

◆製造原価報告書

製造原価報告書は、１会計期間に製造された製品の製造原価を明らかにする報告書です。この報告書で計算された金額が、損益計算書の売上原価の当期製品製造原価に記載されます。

製造原価報告書には、２つの形式があります。

①材料費、労務費、経費の分類に基づくもの

　　　　　製造原価報告書

材料費
　期首材料棚卸高　  ××
　当期材料仕入高　  ××
　　　合計　　　　　     ××
　期末材料棚卸高　  ××　　××
労務費
　賃金 　　　　　       ××
　給料　 　　　　       ×× 　 ××
経費
　水道光熱費　　　　  ××
　減価償却費　　　　  ××
　保険料　　　　　     ××
　賃借料　　　　　     ××    ××
　　合計　　　　　　　           ××
　　製造間接費配賦差異 　　 ××
　　当期製造費用　　　　　    ××
　　期首仕掛品棚卸高　　　　 ××
　　　　合計　　　　　　         ××　
　　期末仕掛品棚卸高　　　　××
　　当期製品製造原価　　　　××

②直接費、間接費の分類に基づくもの

　　　　　製造原価報告書

直接材料費
　期首材料棚卸高　　　  ××
　当期材料仕入高　　　  ××
　　　合計　　　　　　      ××
　期末材料棚卸高　　　  ××　××
直接労務費　　　　　　　　     　××
直接経費　　　　　　　　　  　    ××
製造間接費
　間接材料費　　　　    ××
　間接労務費　　　　    ××
　電力料　　　　　       ××
　減価償却費　　　　    ××　　
　　合計　　   　　　　    ××
　製造間接費配賦差異 ××　 ××
　　当期製造費用　　　　    　  ××
　　期首仕掛品棚卸高　　　 　  ××
　　　　合計　　　　　　　　        ××　
　　期末仕掛品棚卸高　　　　   ××
　　当期製品製造原価　　　　　 ××

※製造間接費配賦差異については、借方差異であれば減算され、貸方差異であれば加算されます。特に、上記①の形式では注意して下さい。