◆標準原価計算の意義と目的
標準原価計算は、科学的・統計的な分析に基づいて算定された標準原価によって、製品の原価を計算する原価計算です。
標準原価と実際原価とを比較することによって差異を分析し、発生原因を明らかにすることによって、適切な原価管理を行うことが可能となります。
また、実際原価の計算結果を待たずに完成品原価が計算できるため、記帳の簡略化・迅速化という点でもすぐれています。
◆標準原価計算の方法と記帳
●標準原価計算の方法
標準原価計算の方法は次の通りとなります。
①原価標準の設定
会計期首において、製品1単位当たりの目標となる原価標準を設定し、作業現場に対して明確な目標を与えることによって、無駄な原価の発生を未然に防ぎます。
②標準原価の計算
原価標準に一原価計算期間の実際生産量を乗ずることによって、当月の標準原価を計算します。
③実際原価の計算
一原価計算期間の生産活動から発生した当月の実際原価を集計します。
④原価差異の計算・分析
当月の実際原価と当月の標準原価を比較して原価差異を計算し、分析します。
●原価標準の設定
標準原価計算を実施するためには、製品の製造に先立って、製品1単位当たりの製造に要する原価を原価要素別(直接材料費、直接労務費、製造間接費)に設定します。この製品1単位当たりの製造に必要な原価を原価標準という。原価標準は、標準原価カードとして次のように記載されます。
標準原価カード
製品X
標準直接材料費 600円/㎏ 5㎏ 3,000円
標準直接労務費 500円/時 2時間 1,000円
製造間接費 400円/時 2時間 800円
製品1単位当たりの標準原価 4,800円
①標準直接材料費
標準単価と標準消費量を設定し、両者を乗じたものが、製品1単位当たりの標準直接材料費となります。
②標準直接労務費
標準賃率と標準直接作業時間を設定し、両者を乗じたものが、製品1単位当たりの標準直接労務費となります。
③製造間接費
製造間接費の配賦基準には様々ありますが、試験では、ほとんどは直接作業時間基準で出題されていますので、ここでは、直接作業時間で説明します。
標準配賦率と標準作業時間を設定し、両者を乗じたものが、製品1単位当たりの標準製造間接費となります。
●標準原価の計算
原価標準に完成品数量や仕掛品数量を乗ずることによって、完成品原価と月末仕掛品原価を計算します。
(1)完成品標準原価=原価標準の合計×完成品数量
(2)月初・月末仕掛品標準原価=原価標準×仕掛品の完成品換算数量
直接材料が加工開始時に全部投入されている場合は、次のように仕掛品原価は計算されます。
①製品1単位当たり標準直接材料費×仕掛品数量=直接材料費仕掛品原価
②製品1単位当たり標準直接労務費×仕掛品換算数量=直接労務費仕掛品原価
③製品1単位当たり標準製造間接費×仕掛品換算数量=製造間接費仕掛品原価
④仕掛品原価=①+②+③
●標準原価計算の記帳
標準原価計算の記帳方法には、パーシャルプランとシングルプランがあります。
(1)パーシャルプラン
仕掛品勘定の借方に各原価要素の消費額を実際原価で振り替え、貸方には完成品原価と月末仕掛品原価を標準原価で記入します(借方に記入される月初仕掛品は前月の月末仕掛品であるため標準原価で記入されます)。
仕掛品勘定の貸借差額が原価差異であり、原価差異は仕掛品勘定から各原価差異の勘定へ振り替えられます。
仕訳は次のようになります。
①完成品原価の振り替え(標準原価で振り替え)
製品 ×× 仕掛品 ××
②各原価要素からの振り替え(実際原価で振り替え)
仕掛品 ×× 材料 ××
製造間接費 ××
仕掛品 ×× 賃金 ××
製造間接費 ××
仕掛品 ×× 経費 ××
製造間接費 ××
仕掛品 ×× 製造間接費 ××
③原価差異の振り替え
仕掛品 ×× ○○差異 ××
○○差異 ×× 仕掛品 ××
(2)シングルプラン
仕掛品勘定の全てを標準原価で行います。原価差異は各原価要素で把握され、各原価差異の勘定へ振り替えられます。
仕訳は次のようになります。
①完成品原価の振り替え(標準原価で振り替え)
製品 ×× 仕掛品 ××
②各原価要素からの振り替え(仕掛品勘定へは標準原価で振り替え)
仕掛品 ×× 材料 ××
製造間接費 ××
仕掛品 ×× 賃金 ××
製造間接費 ××
仕掛品 ×× 経費 ××
製造間接費 ××
仕掛品 ×× 製造間接費 ××
③原価差異の振り替え
○○差異 ×× 材料 ××
賃金 ×× ○○差異 ××
○○差異 ×× 製造間接費 ××
◆原価差異の計算と分析
標準原価と実際原価とを比較して原価差異を計算します。
原価差異には、不利差異(借方差異)と有利差異(貸方差異)があります。
実際原価>標準原価のときは、不利差異(借方差異)で、実際原価<標準原価のときは、有利差異(貸方差異)です。
なお、以下で説明いたします算式では、実際原価−標準原価となっていますので、プラスのときは、不利差異(借方差異)で、マイナスのときは、有利差異(貸方差異)となります。
原価差異は、直接材料費、直接労務費、製造間接費それぞれについて計算分析を行います。
◆直接材料費の差異
●直接材料費総差異=実際直接材料費−標準直接材料費
このうち、標準直接材料費は次の①か②のいずれかよって計算します。
①製品1単位当たり標準直接材料費×当月投入完成品換算数量(生産量)
※当月投入完成品換算数量=完成品数量+月末仕掛品数量−月初仕掛品数量
②標準単価×標準消費数量
※標準消費数量=製品1単位当たり標準消費数量×当月投入完成品換算数量(生産量)
直接材料費差異は、価格差異と数量差異に分けられます。
●価格差異=(実際単価−標準単価)×実際消費数量
●数量差異=(実際消費数量−標準消費数量)×標準単価
◆直接労務費の差異
●直接労務費総差異=実際直接労務費−標準直接労務費
このうち、標準直接労務費は次の①か②のいずれかよって計算します。
①製品1単位当たり標準直接労務費×当月投入完成品換算数量(生産量)
※当月投入完成品換算数量=完成品数量+月末仕掛品換算数量−月初仕掛品換算数量
②標準賃率×標準直接作業時間
※標準直接作業時間=製品1単位当たり標準直接作業時間×当月投入完成品換算数量(生産量)
直接労務費差異は、賃率差異と時間差異に分けられます。
●賃率差異=(実際賃率−標準賃率)×実際直接作業時間
●時間差異=(実際直接作業時間−標準直接作業時間)×標準賃率
◆製造間接費の差異
製造間接費の差異分析については、まず、予算管理との関係から、固定予算と変動予算がありますが、ここでは、公式法変動予算による場合で説明していきます。
また、差異の計算方法として、3分法−1、3分法−2、4分法と三つの計算方法があります。
(1)3分法−1
●製造間接費総差異=製造間接費実際発生額−標準製造間接費
このうち、標準製造間接費は次の①か②のいずれかよって計算します。
①製品1単位当たり標準製造間接費×当月投入完成品換算数量(生産量)
※当月投入完成品換算数量=完成品数量+月末仕掛品換算数量−月初仕掛品換算数量
②標準配賦率×標準直接作業時間
※標準直接作業時間=製品1単位当たり標準直接作業時間×当月投入完成品換算数量(生産量)
製造間接費差異は、予算差異・能率差異・操業度差異の3つに分けられます。
製造間接費の各差異の計算は、かなり難解な部分になるかと思います。各差異を計算するに当たっては、次の6つのデータが必要になりますので、整理してから計算式の方に入っていくといいと思います。
■まず、配賦率です。
合計の配賦率、そしてそれを2つに分けます。変動費率、固定費率です。
合計の配賦率は、標準原価カードに記載されています1時間当たりの配賦率です。
変動費率は、試験では与えられことが多いと思います。
固定費率は、合計の配賦率と変動費率が与えられている場合には、合計配賦率−変動費率で求められます。
■次に、直接作業時間です。
こちらは、標準時間、実際時間、基準時間の3つが必要になります。
標準時間は、上記にある通りです。
実際時間は、試験では与えられます。
基準時間は、固定費予算額/固定費率で求めます。
そ
れでは、3分法−1による、各差異の計算方法です。
●予算差異=製造間接費実際発生額−(実際直接作業時間×変動費率+固定費予算額)
●能率差異=(実際直接作業時間−標準直接作業時間)×標準配賦率
●操業度差異=(基準直接作業時間−実際直接作業時間)×固定費率
※試験では、○分法で解きなさいといった指示ではないことが多いです。「能率差異は、(実際直接作業時間−標準作業時間)×標準配賦率 で計算すること」などの指示で出てくることが多いですので、しっかりと問題文を読んで、どの方法で計算するのかを判断して下さい。
(2)3分法−2
3分法−2による各差異の計算ですが、予算差異は3分法−1と同じになります。
●能率差異=(実際直接作業時間−標準直接作業時間)×変動費率
●操業度差異=(基準直接作業時間−標準直接作業時間)×固定費率
(2)4分法
4分法による各差異の計算ですが、予算差異は3分法−1及び2と同じになります。また、操業度差
異も3分法−1と同じです。4分法では、能率差異を2つに分けて計算します。
●変動費能率差異=(実際直接作業時間−標準直接作業時間)×変動費率
●固定費能率差異=(実際直接作業時間−標準直接作業時間)×固定費率
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